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『エクリプス クロスは人生を賭けたクルマになる』 商品企画責任者 : 林祐一郎氏インタビュー

兵庫三菱Web編集局 | 記事・撮影 : N.Yokoyama
配信日 : 2017年4月20日 18時30分 JST

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今回のインタビューは、三菱自動車工業株式会社 チーフ・プロダクト・スペシャリストの林祐一郎氏。先月、ジュネーブで世界初披露となった三菱の新型コンパクトSUV『エクリプス クロス』の企画責任者です。2017年4月15日に東京お台場で開催されたモータースポーツジャパン2017にて『エクリプス クロス』(海外仕様車)が日本初披露されました。そのイベント最中の慌ただしいなか快くインタビューに応じていただけました。

以下、林祐一郎氏インタビュー全文

『エクリプス クロス』の企画は2013年に始動

-----今日はどうぞよろしくお願い致します。さっそくですが、林さんのプロフィールから教えていただけますか

「こちらこそ、よろしくお願い致します。私は、三菱自動車ではもう20年間ほどでしょうか、商品企画部に長い期間たずさわっています。この肩書き(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)は今年の1月からでして、ちょっと何やってるのよくわかりにくい肩書きなのですけど(笑)、とにかく『エクリプス クロス』の商品性すべてに責務を負うという役目です。」

-----『エクリプス クロス』の企画・開発はいつから始まったんでしょうか?

「2013年からになります。もともとは商品企画のマネージャーとして『エクリプス クロス』に携わっているのですが、 製品アイデアの創出からコンセプトの開発、当然初めはスケッチレベルでいくつものスケッチを作るという作業過程を繰り返し、それを海外にも見せて、そうすると次は1/1のモデルが出来上がってきて....その過程を経て、先月のジュネーブモーターショーでようやく実車を公開することができました。今日ここお台場で公開している実車はジュネーブモーターショーの時よりもさらに仕上がっています。こうして無事に実車を日本の皆様にお見せすることができて本当に嬉しいです。まだまだ細部を修正していかなければいけないのですが、いよいよ発売に向かって本格的に動き出してきたなと。」

ジュネーブモーターショーでの反響はNo.1

-----2017年3月のジュネーブモーターショーで世界初披露となった『エクリプス クロス』ですが、反響はどうでしたか?

「ジュネーブではプレスカンファレンスでまずは代表取締役社長の益子が話して、そのあと記者の方からの質問や撮影といった時間になります。プレスカンファレンスはトヨタ、日産、三菱、マツダといった感じでメーカーごとに順番に進んでいくので通常は記者が次のメーカーへと流れていってしまうのですけど、その日は記者の方々が他所に流れず、三菱ブースに残って質問や撮影が続いたんです。こんなに記者の方に残っていただけるプレスカンファレンスは本当に久しぶりでした。」

-----ジュネーブの様子は私もWebでしかまだみたことがなかったんですが、現場での注目度も高かったんですね

「ジュネーブでの反響はデータでも裏付けされていて、あくまで自社調べとなりますが、雑誌だとかウェブだとかメディアで取り上げられて記事になった数のデータがあって、国産メーカーで一番多かったのが三菱自動車。日本国内だけではなく、スイスやヨーロッパでも反響が大きくて、そのデータを見て改めて注目の高さを実感しました。」

CX-5が『エクリプス クロス』当面の競合に

-----『エクリプス クロス』このネーミングの由来は?

「最初の段階ではエクリプスの名前を使う予定はなかったんですが、クーペ型のSUVにしようとなってからは、そこからはスムーズに決まりました。クーペの代表は間違いなく*三菱・エクリプスだろうということで、そこにクロスオーバーSUVのクロスをとって、『エクリプス クロス』。非常にシンプルですが今回の新型車にとても似合うネーミングだと思っています。」

-----『エクリプス クロス』はアウトランダーとRVRの中間サイズとのことですが

「『エクリプス クロス』はRVRと同じコンパクトクラスに分類されます。ただ、もう少し厳密にご説明する必要があって、コンパクトクラスのなかでも小さめのコンパクト、大きめのコンパクトの2つに分かれてきていて、この大きめのコンパクトクラスに『エクリプス クロス』を投入するということです。」

-----RVRは小さめのコンパクトクラスの位置付けということですね

「そうなります。スモールクラスはジューク(日産)、小さめのコンパクトクラスはRVR(三菱)、ヴェゼル(ホンダ)、CX-3(マツダ)、などで、ミッドクラスにはアウトランダー(三菱)、エクストレイル(日産)、CX-5(マツダ)が該当します。」

---『エクリプス クロス』は大きめのコンパクトクラスとのことですが、このクラスに該当する競合車は?

「日本国内に限ると、国産でこのクラスのSUVは現状『エクリプス クロス』だけで、他メーカーに先駆けてこのクラスにSUVを投入することになります。海外メーカーでは、ティグアン(フォルクスワーゲン/ドイツ)、ツーソン(ヒュンダイ/韓国)、スポルテージ(起亜/韓国)が同じクラスで、欧州市場で人気のあるキャシュカイ(日産)も同じクラスですね。ですが、ミッドクラスにあたるCX-5(マツダ)が同じ2.2L クリーンディーゼルでサイズも比較的近いということもあり、『エクリプス クロス』の当面の競合と考えています。」

コンパクトSUVには何よりもデザインが求められる

-----エクリプスクロスは特にデザイン面を最重要として企画されたとのことですが

「そうですね。そもそもなぜデザイン重視なのかというと、コンパクトSUVに求められるものは何かを分析していくと、圧倒的にデザイン面だったんです。もちろん、どの車でもデザインは大事な要素なんですが、コンパクトSUVは際立って高い比率でデザイン面が重視されているんです。ただ、スタイリングだけではなく実用面も追求しました。」

-----どういった部分を追求されたのでしょうか

「コンパクトSUVのクラスでは珍しいのですが、例えばリアシートはスライド&8段階リクライニング機能を採用して荷室のサイズを確保できるようになっています。SUVの基本性能であるデパーチャーアングル、アプローチアングル、最低地上高も確保しています。なぜかというと「三菱のSUV」としての機能性は絶対に守りたかった。スタイリング重視するあまりSUVの基本性能や、後方視界が悪いという問題を割り切って妥協しているSUVが多いんですが、『エクリプス クロス』ではスタイリングとSUVとしての実用性の両方を極限まで追い求めました。そういった面でも他にはないクオリティに仕上がっていると自信をもっています。」

デリカD:5よりも高性能なディーゼルエンジン

-----ガソリン車とクリーンディーゼル車のラインナップとなりますが

「ガソリン車は、三菱の新開発1.5Lダウンサイジング直噴ターボエンジンで、それを基本に全世界展開しようという計画です。ダウンサイジングターボは今の時代の潮流ですし、さらに進化した2.2L クリーンディーゼルターボエンジン(8AT)ではヨーロッパのディーゼル市場を抑えたいという狙いも当然あります。ヨーロッパでは半数以上がディーゼル車というディーゼル文化なので。」

-----進化したクリーンディーゼルということですが、どういった部分が?

「日本ではデリカD:5クリーンディーゼルの評判がとても良いんですが、それをさらに進化させています。8ATという三菱の国内向けとしては新投入になるんですが、6速から8速になってそれによってトルク容量がアップしました。デリカD:5よりもさらにトルクフルなパワートレインがこのコンパクトSUVにのるということなので、非常にそのへんは期待していただきたい部分です。

-----PHEV(プラグインハイブリッドEV)は?

「PHEVに関してはいまのところ計画はありません。三菱がこれからSUVと電動車両を軸に進めていくという戦略に変わりはありませんので、立ち上がりはガソリンとグリーンディーゼルで勝負しますが、いつかの段階で電動車を投入するというのはあるかもしれません。」

女性の影響力がさらに拡大していく時代に

-----個人的な経験なんですが、最近、SUVに乗る女性をみかけることが多くなりました。特に多いのがヴェゼル、CX-3あたりですがレクサスのSUVに乗る女性も。このあたり女性ユーザーについてはどうお考えですか?

「実はまさにその通りで、データで見てもこの5年でSUVに乗る女性比率はすごく増加していますし、SUVに限らず自動車市場における女性の影響力は今後さらに拡大していくと考えています。『エクリプス クロス』の女性ターゲットユーザー設定のひとつに、子育てを終えて自分たちの人生をこれからまた夫婦二人で楽しみたいという方々であったり、もうひとつに若いキャリアウーマンであったり。そういった女性をイメージしながら『エクリプス クロス』は開発されてきたんです。」

-----具体的に女性ユーザーにアピールできる部分などありますか?

「ひとつ女性の方々にアピールしたい部分なんですが、ドアを開けた時にサイドシルのところ、ガーニッシュていうんですけども、いままでの車だとボディ側にくっついているんですが、『エクリプス クロス』はドアにそれがくっついていて一緒に開きます。雨の日、雪の日だとかこの部分に泥がついて乗り降りする時に服が汚れてしまうということがあるんですが、ドアと一緒にガーニッシュが開くので、乗り降りしやすいと同時に服も汚れない。そういった日本人的な細やかな配慮が施されています。」

『エクリプス クロス』は自分の人生を賭けたクルマになる

-----近年のSUVブームについてはどういった意見をお持ちでしょうか?

「いま、SUVは世界的な潮流となっていて2020年には全世界の車の4分の1がSUVになるという予測です。そして、そのなかで三菱のSUVは非常にチャンスがあると思っています。SUVは、これまでは4WDで車高が高くて荷室が広くて・・というイメージが強かったと思いますが、今はもうそうじゃなくなってきています。スタイリッシュなデザインであったり、逆に真四角のゴツゴツとしたSUVに戻っていったり、車種もお客様のニーズも非常に多様化が進んでいて、それに対応したのがまさに今回の『エクリプス クロス』です。今後、三菱はSUVを強化していく戦略にありますが、それは今までと同じものではなくて、時代に合った今までとは違った形のSUVを投入していきたいと考えています。」

-----「三菱のSUV」の強みというのはどういったものですか?

「今回の『エクリプス クロス』がそれを体現しているのですが、スタイリングを重視するが、SUVとしての最低限の機能は譲らない。他社が譲っていてたとしても三菱は絶対に譲らないという方針です。『エクリプス クロス』は**S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)を四駆は標準設定。いままで三菱が培ってきたSUVの歴史は守りながらやっていく、社員みながそういう気持ちをもって取り組んでいます。」

-----三菱が培ってきた「SUVの歴史」として最も影響力のある車は?

「私はエボファイナルも担当していましたので、どうしても個人的な想いが入ってしまいますが、それこそS-AWCというのはエボで生まれた技術ですし、やりかたは変わるんだけども思想は統一している。エボやパジェロ、ギャランといった三菱の歴史となる車の技術や思想を受け継ぎ、自分の人生を賭けて『エクリプス クロス』を三菱のSUVとして歴史に残るクルマにしていきたいと思っています。」

日産との協業効果は想像以上なものに

-----新型車の予定は?

「それは現時点ではやはり申し上げられないです(笑)。ただ、三菱としてはSUVや電動車に力をいれていくという方針は変わらないですし、日産との協業というのは今後大きなメリットになっていくと思います。」

-----メリットというのは?

「日産の自動車で三菱にとって強みとして使えるものがあったりしますし、またはその逆もあります。そういった面でお互いに強みや弱みをカバーしあって、選択肢が増えるということはものすごいメリットです。コスト面にしてもそうですし、あらゆる面で協業の効果ってすごいんだなという声を多く耳にするようになってきました。協業が生み出す相乗効果を社員が認識しはじめているところですし、この機会を最大限活かしていきたい。」

-----日産も経営難に陥った時にルノーとの協業でV字回復した歴史がありますし、その経験も必ず活きてきますね

「まさにおっしゃる通りで、日産の方々は以前の成功体験があるから協業していくことにすごく前向きです。これやろうあれやろうと非常に積極的ですし、新会長のゴーンも田町の本社に何度もきているのですが、タウンホールミーティングという社員と意見交換する場も多くあり、すごく前向きに取り組むことができています。日産に負けず我々も!と士気が高まっています。」

インタビューここまで

注釈

*三菱・エクリプス(ECLIPSE)

エクリプス(ECLIPSE)は、三菱自動車工業の米国法人、ダイアモンド・スター・モーターズが生産していたスポーツカーで、ギャランをベースに1985年に誕生。北米市場では大きなヒットとなり、当時のスポーツコンパクトカーの代名詞とも呼べる存在。

**S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)

ランサーエボリューションから生まれた三菱自動車の車両運動統合制御システムで、「意のままの操縦性」と「卓越した安定性」この2つを思想として4輪の駆動力・制動力を制御する。天候の急変や路面状況の変化に応じシステムが最適な制御を行い、ドライバーが意図した通りにクルマを走行させることができる。



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