街レポ#18『あしや芸術祭』芦屋神社|縁結びからアートまで?常識破りな魅力の秘密に迫る
兵庫三菱Web編集局 | 記事 : N.Nagasaka
配信日 : 2019年10月26日 19時00分 JST
イントロダクション・芦屋の街を見守る神社
『芦屋神社』をご存知ですか?
阪急芦屋川駅から北へ15分ほど坂を登った閑静なお屋敷街に佇む、長い歴史を持つ神社です。
それほど大きくはない境内ですが、1500年前の古墳があったり、17もの神様がいたりと見所が満載。
さらには、ジャズライブの主催や、今年初開催の「あしや芸術祭」のメイン会場であったりと、もはやただの神社ではありません。
こうした取り組みの裏には、宮司・山西康司さんのある熱い思いが。本記事の終盤には、山西さんへのインタビューも収録しています。
「聞いたことはあっても、行ったことはない」、「最近あまり行ってない」そんなあなたが訪れたくなる、芦屋神社の魅力をご紹介。
目次
17もの神様を祀る神社
芦屋神社の本殿には、驚くことに17柱もの神々が祀られています。
その理由は、神社合祀令です。明治時代、国より神社合祀令が発せられ、当時芦屋村にあった神社が1つにまとめられました。芦屋神社はその総鎮守として、各神社の神々を全て祀っているのです。そのため、縁結びから酒造りまで、あらゆる種類のご利益をいわば「総ナメ」できてしまうのが、この神社の魅力のひとつです。
芦屋神社で祀られている17柱の神様。その中でも「メイン」は縁結びや交渉の神「天穂日命-アメノホヒノミコト-」です。
この神様は、日本国民の総氏神とされる「天照大神」の次男です。日本神話の時代に、芦屋神社のある六甲山に降臨し、「国譲り」という大変重要な交渉をまとめ、日本という国の形成に欠かせなかったとされます。このため、天穂日命は縁結び・交渉の神様として祀られているのです。
また、芦屋神社には信じられないほどの錚々たる面々が寄付をされています。
(松下電器、住友銀行などの名前が並ぶ。)
というのも、芦屋神社の縁結びには、人と人だけでなく、仕事同士の縁も含まれます。つまり、名だたる企業の社長さんたちがここで縁結びのご利益を受け、お礼に寄付をしたということ。まさに、お墨付きのご利益といえます...!
美しい拝殿
芦屋神社の拝殿は、昭和5年に建て替えられ今に至ります。
拝殿の内部はこのような様子です。
この拝殿には、珍しい古い建築技法が使われています。
例えば、「割拝殿」。
通常の場合、参列者は御神体に対し正面を向いて座ります。しかし、割拝殿の神社では、参列者同士が向かい合い、御神体を横目に座る用に作られています。
また、木材がカーブしています。
太い木が、緩やかにカーブして奥へ続いています。なんと、わざわざ一本の大木をカーブに沿うように切り出し、木材にしているんです。なんとも贅沢な木の使い方です。
ちなみに、拝殿の天井付近には、鏡が取り付けられています。
賽銭箱から見上げるとちょうど自分の顔が映る位置にありますね。自分の顔を確認し、明るい表情でお参りができるようにという粋な計らいです。
1500年前の横穴式石室古墳・水神社
境内の西側には、なんと横穴式石室古墳が1500年前の姿のまま残っています。
古墳そのものが水神社(すいじんじゃ)として縁結びの神さまを祀る社になっています。
実は、昔この辺りには群集墳がありました。石を使った墓に入ることがステータスとなっていた古墳時代後期、六甲山の石材を求めて芦屋の外からも墓を作りにきた人々がいたのだとか。
市内で唯一完全な状態で残る芦屋神社の古墳は、市の重要文化財にもなっています。
百人一首の歌人・猿丸太夫の墓
奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ秋は悲しき
百人一首に収録されているこの詩は、平安時代の歌人・猿丸太夫が芦屋の地で詠んだとされるものです。
芦屋神社には、猿丸太夫の墓が残っており、技芸上達の神として祀っています。現在も太夫のご子孫がお参りに来られ、大切に守られているそう。静かな境内で、秋の詩を詠んだ太夫に思いを馳せると、心が落ち着くようです。
地域に寄り添ったイベントの数々
芦屋神社の最大の魅力ともいえるのが、積極的に開催されるイベントの数々。
神社らしいものから、とてもそうとは思えないものまで様々です。
イベントなどに使われる参集所
例えば、
- 「暮らしの中の神道」勉強会
- 子供向け能楽イベント
- だんじり祭り
この辺りは、神社らしい感じです。
と思いきや...
- みそ・しょうゆ作り教室
- フラダンスイベント
- ジャズライブ 一転して、神社とは信じられないような内容です!神社でジャズライブ...。非常に興味深いですね。
そして2019年10月現在も、ある一大イベントが開催中です。
それは、今年初開催の『あしや芸術祭』。
10月20日〜11月10日の期間に、芦屋の4箇所の会場で開催される芸術祭です。
メイン会場の芦屋神社では、なんとあの世界的ファッションデザイナー・コシノヒロコさんのトークショー(10月26日。すでに満員)に加え、コシノヒロコさんや他の芸術家たちの芸術作品の展示(入場無料)が行われます。
このように、芦屋神社では神社というプラットフォームを最大限に生かして、地域を盛り上げる数々のイベントが開催されているのです。
インタビュー:「未来に渡って人々に良い影響を」宮司・山西さんの思い
長い歴史を守り続けるだけなく、地域に根ざした新しい価値を発信する芦屋神社。どのような思いで地域に関わっているのか、宮司の山西康司さんにお話を伺いました。
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ーー他の神社では見られないような積極的な取り組みには、大変な部分もあるかと思います。どのような思いで行われているのでしょうか?
宮司・山西康司さん(以下、山西):後世にわたって、この場所にただ神社があるだけではなく、皆さんの生活に何らかの影響を与えていきたい、お参りの方々の心を癒す場所でありたい、そういった思いです。地域に対する神社の役目を果たし、次の代へと引き継いで行きたいです。
.
ーー現在開催中のあしや芸術祭の実行委員長もされていますが、芸術祭に対してはどのような思いをお持ちですか?
山西さん:神社というのは、古くから文化の発信源としての役割を担ってきました。その役割を芸術祭を通して果たしたいと考えています。 本来芸術というのは、誰もが自由に気軽に楽しめるものです。しかし、世間では敷居が高いと感じている人もたくさんいます。どうにかこの敷居を下げて、芦屋の素晴らしい芸術文化に触れて欲しい。その気持ちを甲南女子大教授の河崎晃一さん(故人。具体美術研究家)と共有し、2年ほどの準備を経て、ようやく今回実現しました。子供達も含めた多くの人が芸術に自由に触れられる場にしたいので、入場料は無料にしています。
また、阪神間の芸術を盛り上げたいという思いもあります。かつて芦屋をはじめとした阪神間は、「阪神間モダニズム」や「具体美術協会」など、美術史上極めて重要な存在でした。今後、この『あしや芸術祭』を皮切りに、阪神間の芸術にもう一度大きなムーブメントを起こせればと考えています。
まとめ
いかがでしたか?
古墳や17柱の神々など、歴史的に重要な神域でありつつも、なにより地域との深い関わりを大切にする芦屋神社。取材当日も、多くの人が笑顔で参拝され、心地よい空気が流れていました。宮司・山西さんがおっしゃるように、長い年月がたっても人々の心の拠り所であり続けるでしょう。
現在、芦屋神社では『あしや芸術祭』が開催中です。この機会に、行ったことのない方や、最近足が遠のいていた方は訪れてみてはどうでしょうか?きっと、芦屋の魅力を再発見することができるはずです。
芦屋神社
- 住所:
- 〒659-0095 兵庫県芦屋市東芦屋町20−3
- 電話番号:
- 0797-34-1833
- 公式HP
- 芦屋神社
- アクセス
- JR:JR芦屋駅よりワンメーター
阪急電車:阪急芦屋駅よりワンメーター
阪神電車:阪神芦屋駅よりタクシーで15分
バス:「芦屋市民プール前」下車 徒歩5分
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