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街レポ#22『横尾忠則現代美術館』|鬼才が「気分」で絵を描いた結果

兵庫三菱Web編集局 | 記事 : N.Nagasaka
配信日 : 2019年11月22日 19時00分 JST

日本を代表するグラフィックデザイナー、画家であり、執筆活動においても活躍する横尾忠則
兵庫県出身の彼の名を冠した『横尾忠則現代美術館』が、神戸市灘区にあります。

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現在ここでは、横尾忠則が自らキュレーション(企画)をした展覧会『自我自損』展が開催中。公立美術館で横尾が自らキュレーターを務めるのは初めてという、大変貴重な展覧会です。どうやらインスタ映え的な展示もあるそう!レポートしてきました。

横尾忠則とは?

横尾忠則(よこお ただのり)は、兵庫県西脇市出身の、日本を代表する美術家の一人です。

IMG_4268-min.jpeg 現在放映中のNHK大河ドラマ『いだてん』のポスター・題字を担当している、と言えば、わかる方もいるでしょうか? 現在なんと83歳でいながら、グラフィックデザインをはじめ、画家、執筆活動など様々な領域で現役で活躍しています。

横尾は、1956年に神戸新聞に入社後、ポスター制作で名を上げ、59年に独立。ぐんぐんと活躍の幅を広げていきました。72年にはニューヨーク近代美術館で個展を開催するなど、世界的にも著名なデザイナーとなります。しかし、82年に画家・ピカソの展覧会で衝撃を受け、「画家宣言」。以降、絵画を主軸として活動し、現在もアート界の第一線で活躍し続ける美術家です。

「自我自損」展とは?

「自我自損」展は、公立美術館では初めて横尾自身がキュレーションを手がける展覧会。つまり、展示内容は横尾忠則自身が選んでいるということです。
「自我自損」という言葉は、エゴに固執すると損をする、という意味の造語。その言葉通り、展覧会の内容は自己否定にあふれています。展示されるのは、かつての作品を再度上から描き直した作品や、同じ画家が描いたとは思えないほど違うスタイルの作品の数々。

と、このように堅苦しく説明すると敷居が高いように感じるかもしれませんが、その必要はありません。横尾忠則はこの展覧会の見どころを聞かれ、次のように答えています。

「私は自作を説明することは好みません。従って見どころは見る側の問題で、私作者の問題ではありません。」

しかも、展示作品を選んだ基準はなんとその日の「気分」だそう。
周辺環境の影響を真正面から受け入れ、芸術へ落とし込み、思いの向くままに生きてきた横尾忠則の人生を追体験できるような展覧会です。

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展示作品をご紹介!

ここからは、展示作品の一部を見ていきましょう。

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『I'm Running Out of Time』

真っ赤な背景がひときわ目を引くこの作品。家が燃えているようにも見えます。手前の男性は、おそらく日本を代表する文豪・三島由紀夫がモデルでしょう。

横尾忠則は、三島由紀夫の大ファンであり、二人は深い友好関係にありました。
横尾がまだ名のしれていなかった頃、初の個展に三島が訪れたことがきっかけで、二人は交流を始めます。その後三島の雑誌連載の挿絵や本の装幀に抜擢され、横尾は有名になっていきました。横尾は三島の考え方に非常に影響を受けたとも話しています。

ちなみに、横尾の絵には大きな文字が描かれていることが多いです。見る側としては、文字の真意が気になるところ。しかし、本人曰くそれすらも「気分」で描いているそう。解釈は、全て見る方に委ねられています。

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ウォーホル.jpeg

『A.W. Mandara』

壁一面を使って展示されているこちらの作品。
大量生産・大量消費を批判したポップアートの大家・アンディ・ウォーホルのオマージュ作品でしょうか。ところどころに「SALE」の文字が描かれています。

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デヴィッド・ボウイがアンディ・ウォーホルに扮している絵など、探すとたくさんの発見があるのも、横尾作品の魅力です。

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『ミケランジェロと北斎の因果関係』

こちらは、ろうそくを持ったカラフルなダビデ像が描かれた絵。
だまし絵のようにも見えます。一体どういう発想ができればこんな絵をかけるのか、検討もつきません。像の足元には、「If I can live to be a hundred, I will be able to understand whole universe(100歳まで生きられたら、宇宙の全てを理解できるだろう)」と描かれています。一体何の事なのでしょう。

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『Devil Man』

今回の展覧会で最も印象深かった作品の1つ『Devil Man』です。

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なんと、いたるところに子供の頃女子たちがよく使っていたようなシールが貼られています。最初は誰かのいたずらかと思いましたが、れっきとした作品の一部でした。
本当に自由な発想で制作していることがよくわかります。

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『回転する家』

こちらも非常に興味深い作品『回転する家』です。

横尾忠則は、戦時中に幼少期を過ごした経験から、戦争を扱った絵も多く製作しています。この絵でも、米軍の爆撃機が何かをばらまいている様子が描かれています。しかし、よく見てみると、、、

新聞.jpeg

横尾忠則自身が取り上げられた新聞記事の切抜きです。
内容は、昨年話題になったニュース。ある美術展に向けた制作を準備していた横尾忠則ですが、画材を持った美術館の職員が現場に遅刻し、「制作意欲を削がれた」として展覧会は延期に、というものです。一体どういう意図で記事を組み込んだのかはわかりませんが、おもわず笑ってしまいました。

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最後は、本展随一のインスタ映え展示『瀧のインスタレーション』です。

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天井まで5mほどの広い部屋の壁一面に、滝のポストカードがぎっしりと貼り付けられています。

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床は鏡張りで、謎の世界に迷い込んだよう。

この作品に関しても、横尾忠則らしいおもしろ制作秘話が隠されています。ぜひ、これを読んでいるみなさん自身の目で確認してみてください。

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ミュージアム・ショップでは、豊富なグッズが販売されています。
定番のポストカードから洋服まで、絶対に誰とも被らないようなものばかり!

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私はこちらの『泣き笑い人生』マイクロファイバークロスを購入。キモカワってやつでしょうか。

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奇想天外・横尾忠則ワールドを体験した後は、一階の『ぱんだかふぇ』で一服することもできます。

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ランチプレートが¥1,000(税込)で食べられるので、のぞいてみては?

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まとめ

いかがでしたか?横尾忠則の作り出す摩訶不思議な絵画の世界。
「気分」という自由気ままな発想から繰り出される表現の数々には、おもわず吹き出してしまうようなものもあります。横尾忠則自身に関する解説なども充実しており、アートに対して感じがちな敷居の高さは全くありませんでした。

非日常を味わいたい、そんな人にオススメの横尾忠則現代美術館『自我自損』展でした!

横尾忠則現代美術館
住所:
〒657-0837 兵庫県神戸市灘区原田通3丁目8−30
電話番号:
078-855-5607
公式HP
横尾忠則現代美術館
開館時間
10:00~18:00(入場は17:30まで)
展覧会開催中の金・土曜日は10:00~20:00(入場は19:30まで)
開館時間
月曜日(祝日の場合は翌日)
年末年始(12月31日、1月1日)
メンテナンス休館(12月23日〜12月30日、1月2日〜1月3日)
自我自損展
開催期間
2019年9月14日(土)-12月22日(日)
料金
[横尾忠則 自我自損展]
一般:700(550)円
大学生:550(400)円
70歳以上:350(250)円
高校生以下:無料
写真撮影
一部を除き可
アクセス
阪急電車 王子公園駅 徒歩約6分
JR 灘駅 徒歩約10分
阪神電車 岩屋駅(兵庫県立美術館前) 徒歩約12分
神戸市営バス 「王子動物園前」停留所 徒歩約3分

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