100万円で買える話題の電気自動車『エレクトライク』とは?
記事 兵庫三菱Web編集局 N.Yokoyama 2015.06.16 配信
2015年6月8日、国土交通省から型式認定を受け、日本に新たな自動車メーカー『日本エレクトライク』が誕生しました。神奈川県川崎市に本拠を置くEVベンチャーで、オート3輪EV(電気自動車)の開発・製造を手がけています。1996年に型式認定を受けた光岡自動車以来、実に19年ぶり、日本で16社目の自動車メーカーとなりました。
1. 『エレクトライク』とは?
画像元 http://www.electrike.co.jp/etrike/index.html
『エレクトライク』とは、日本エレクトライク社が製造する、オート3輪EV(電気自動車)の名称です。車種の扱いは「側車付き軽自動車二輪」となり、運転するには普通自動車免許が必要。ドアは無く、シートベルトが不要で、ヘルメットの着用義務がないということ。最高速度は49km、航続可能距離は、一回の充電で約30km走るタイプAと、約60km走るタイプBがあります。日本では1930〜1950年代に、オート3輪が隆盛を極めましたが、より高性能で安全な軽トラックの登場により、衰退しました。エレクトライクは、急ハンドルや雨道で転倒しやすかった昔のオート3輪の課題を解消し安全面が大幅に上昇(下記動画参照)、二酸化炭素を排出しない環境性とを併せ持った、次世代超小型モビリティになる可能性を秘めています。twitterやfacebookなどの反応を見ても、現時点では非常に評価が高いです。
2. 日本エレクトライク社について
株式会社日本エレクトライクを率いるのは松波登氏。トヨタ自動車のワークスドライバーとして活躍し、2008年に日本エレクトライクを創立。次世代自動車メーカーの設立を目指し活動されていました。2012年時点で、3年後の2015年には価格を100万円以内に抑えて一般販売を目指すとの公言通り、それを有言実行。ベンチャー企業ならではの事業推進スピードでEV市場に参入を果たしました。また、同社のオフィシャルサイトによると、取締役には広報のプロフェッショナルである山見博康氏も名を連ねており、今後の事業展開へぬかりのない印象を受けます。
3. 100万円の低価格が実現できるワケ
定価自体は200万円前後という情報がありますが、今回、国土交通省から型式認定されたことで政府補助金の対象となる可能性が高いため、実質100万円程度での販売ができると同社オフィシャルサイトで発表されています。その他では、製造にあたっては、車のフレームであるシャシーはインドBajaj Auto社製を採用しそれをEV仕様にカスタマイズ、電池は香港Sinopoly Battery社製、BMS(バッテリ・マネジメント・システム)はデンマークLithium Balance社製、モータとインバータは韓国VCTech社製を使用し、コストを極力抑えることに成功しているようです。今後、生産台数が増えてくると、さらに安くなるんではないでしょうか。
4. 当面は貨物手段としての普及を目指す
画像元 http://www.electrike.co.jp/
同社オフィシャルサイトによると、
- 山間部等、給油所が少ない地域での農作業用途に
- 長距離を走らない近隣の配達業務に
- 音が出ないので、早朝の配達業務に
- CO2を排出しないので、倉庫や展示会場等、屋内での搬入搬出作業に
- 特徴的な外見を活用し、移動販売車両のベースに
とあります。2輪より積載量が多く、4輪車より機動性に優れ、3輪の問題点であった安全性が大きく改善され、電気走行のため環境にも良く騒音も無い、現代の新たな貨物手段となる可能性を秘めています。
5. エレクトライクの新規参入が意味すること
EV市場は新規参入が比較的容易
EV(電気自動車)は、従来のガソリン車やハイブリッド車などと違い、構造がシンプルであることから、参入障壁が低く、新規参入しやすいと言われています。時価総額世界一の巨大企業アップルも、2020年を目処にEVの生産を開始するという報道もあり、従来の自動車メーカーだけではなく、既に頭角を現してきた米テスラモーターズをはじめ、アップル社や、日本エレクトライク社のように、今後は世界的に続々と新規参入企業が増えてくることが予想されます。
超小型モビリティの増加
国土交通省が、1〜2人乗りの超小型モビリティ自動車の普及促進を目指していることから、その方針にうまくマッチングして今回の型式認定につながったのだと思われます。識者のあいだでは、将来的(5〜15年後)には1〜2乗りの超小型モビリティが街中に溢れるだろうとの予想が多く、エレクトライク社も、当面は貨物手段としての普及を目指してはいますが、かつてのBMWやスバルのように、最初は小さく始め、時期を見て一般向けにシフトチェンジすることも十分に考えられます。従来メーカーもうかうかしてられません。
高齢化する日本市場での可能性
超小型モビリティは、運転操作が容易ということで、高齢者向けの移動手段であるともいえます。15年後には65歳以上の人口が今の倍になるという日本での需要は日に日に高まってくるのではないでしょうか。